車いすの方、寝たきりに近い方、言葉が出にくい方。
「あの方は参加できないから」と、輪の外に車いすを置いたままにしていませんか。
参加できないのは、多くの場合その方の能力ではなく、環境が合っていないからです。座る位置、机の高さ、道具までの距離。この3つを変えるだけで、できることは増えます。
まず、ここを直してください
① 車いすを輪の中に入れる……外に置いた時点で、その方は見学者になります
② 目が合う位置に置く……後ろからでは、司会の表情が見えません
③ 机の高さを合わせる……高すぎると腕が上がらず、何もできなくなります
④ 手の届く距離に置く……届かない位置の道具は、ない道具と同じです
「できること」は必ず残っています
手が動かなくても、目は動きます。声が出なくても、うなずけます。全部できないのではなく、できる部分が残っている——ここから組み立ててください。
残っている力から役割をつくる
目が動く……見る役、選ぶ役(2つ見せて「どちらですか」と目で選んでもらう)
手が少し動く……合図を出す役、鈴を鳴らす役
声が出る……号令をかける役、数を数える役
うなずける……○×で答える役、司会の相づち役
役割があれば、それは参加です。
① 目で参加する:2択で選んでもらう
3択が難しい方には、2つだけ見せて目で選んでもらいます。指をさせなくても、視線が動けば答えになります。
「こっちですか?」と一つずつ確認して、うなずいたほうを答えにしてください。
② 声だけで参加する:一緒に叫ぶ・数える
体が動かなくても、声は出せる方が多くいます。全員で「せーの」と声をそろえる形なら、動けない方も同時に主役になれます。
正解を当てる形だと、答えられない方が黙ります。全員が同じことを言う形には、その心配がありません。
③ 触れて参加する:五感を使う
言葉が出にくい方でも、においや手ざわりには反応します。みかんの皮、お茶の葉、乾いたタオル。手に持ってもらうだけで表情が動きます。
感想を言ってもらう必要はありません。表情が動いたことが参加です。
④ 体の一部だけ動かす
全身の体操ができなくても、足首だけ、指だけ、口だけなら動かせることがあります。
動かせる場所を一つ見つけて、そこだけを一緒にやってください。「全部できない」と「一つだけできる」は、まったく違います。
⑤ 同じ場にいてもらう
何もしていないように見えても、笑い声のする場所にいることと、居室で一人でいることは、まったく違います。
うとうとしていてもかまいません。同じ場にいる時間そのものに意味があります。

作業療法では、「並行プレイ」という考え方があります。同じことを競うのではなく、同じ場で、それぞれのやり方で参加している状態です。
全員がまったく同じ動きをする必要はありません。手を上げる人、うなずく人、見ている人。それぞれの参加の形があってよいのです。
いちばん避けたいのは、正解できる人だけが主役になる形です。答えが1つのクイズは、早い1人が答えた瞬間に、ほかの方が受け身に転落します。「全員が同時に、正解のないことをする」——中重度の方がいる場では、これが最も強い形です。

ご家族が面会に来たときに、輪の中にいる姿を見てもらえるかどうかは、思っている以上に大きなことです。
「何もできなくなった」ではなく「みんなと一緒にいた」。同じ日の記録でも、伝わり方がまったく変わります。
記録に残すときは、できなかったことではなく、その方が何で参加したかを書いてください。「目で選んだ」「うなずいた」「声を出した」。それが次の担当者への引き継ぎになります。


