ふたつのことを同時に行うことをデュアルタスク(二重課題)といいます。歩きながら話す、数えながら手を動かす。
この力が落ちると、話しかけられた瞬間に足が止まり、そこでつまずきます。転倒予防で、いま最も注目されている運動です。
なぜ「同時」なのか
家のなかで転ぶのは、歩くことに集中しているときではありません。呼ばれて振り返ったとき、荷物を持ったとき、考えごとをしていたとき。実際の生活は、いつでも「何かをしながら」歩いています。
だから、歩く練習だけでは足りないのです。
この10種類だけ覚えれば足ります
366日ぶんの体操で使っている二重課題を整理すると、この10の形になりました。道具はいりません。全部、椅子に座ったままできます。
1.数を数えながら足踏み
いちばん基本の形です。歩きながら考える——生活の歩行は、いつでもこの状態です。

ここを見てください
足を止めずに数えられるか。話しかけると立ち止まってしまう方は、転倒の危険が高いとされています。座ったままの足踏みでも同じことが確かめられます。
この形を使っている日(96日ぶん)
1月1日・1月7日・1月22日・1月24日・1月28日・1月31日・2月4日・2月10日・2月11日・2月26日・2月29日・3月10日・3月12日・3月13日 ほか82日
2.足踏みしながら手をたたく
手と足のタイミングをそろえる、いちばん分かりやすい二重課題です。

ここを見てください
まず足だけ、次に手だけ、と分けて練習してから合わせてください。いきなり同時に求めると参加をあきらめます。
この形を使っている日(30日ぶん)
1月11日・1月20日・1月23日・1月29日・2月22日・3月1日・3月6日・3月19日・3月26日・3月27日・3月31日・4月1日・4月11日・5月2日 ほか16日
3.声を出しながら口を動かす
声と動作を別々に動かします。飲み込みの練習にもなります。

ここを見てください
声が出るということは、息が吐けているということ。むせたときにせきをする力と同じものを使っています。
この形を使っている日(60日ぶん)
1月19日・1月27日・1月30日・2月1日・2月15日・2月18日・2月25日・2月28日・3月3日・3月4日・3月22日・4月2日・4月15日・4月19日 ほか46日
4.指を1本ずつ折る
言葉と指を同時に動かします。名前が出てこないと指が止まります。

ここを見てください
となりの指がつられて動くうちは、まだ分離できていません。ボタンや小銭の扱いにつながる力です。
この形を使っている日(33日ぶん)
1月4日・1月15日・1月25日・2月2日・2月6日・2月12日・3月9日・3月24日・3月28日・4月7日・4月28日・4月30日・5月1日・5月12日 ほか19日
5.右手と左手で違う動き
脳の左右をまたいで使います。認知症予防の運動でよく使われる形です。

ここを見てください
できるかどうかは問題ではありません。うまくいかず笑いながらやり直している時間こそが効いています。
この形を使っている日(41日ぶん)
1月10日・1月13日・1月21日・2月9日・2月13日・2月17日・2月21日・2月23日・3月2日・3月25日・3月29日・4月3日・4月12日・4月18日 ほか27日
6.合図で動きを切りかえる
耳で聞いた言葉を、決めごとに置きかえてから体を動かします。

ここを見てください
「聞く・決める・動く」が続けて働きます。混乱する方が出たら、選択肢を2つに減らしてください。
この形を使っている日(41日ぶん)
1月5日・1月8日・1月12日・1月17日・1月18日・1月26日・2月3日・2月5日・2月16日・2月19日・2月24日・3月7日・3月11日・3月15日 ほか27日
7.合図を判断して手をたたく
たたく合図と、たたかない合図を混ぜます。

ここを見てください
「動かない」を選ぶのが、いちばん難しくなります。抑える力は、とっさに転倒を防ぐ力とつながっています。
この形を使っている日(21日ぶん)
1月16日・2月20日・4月4日・4月17日・4月25日・5月7日・5月13日・5月26日・5月27日・6月2日・6月17日・6月25日・7月5日・7月6日 ほか7日
8.手を合わせながら別の動き
手を合わせた形を保ったまま、位置や向きを変えます。

ここを見てください
形を保つことと動かすことを同時に行います。姿勢を保つ力も一緒に使われます。
この形を使っている日(18日ぶん)
1月2日・1月14日・2月14日・2月27日・3月5日・3月18日・4月8日・4月16日・4月29日・5月11日・5月23日・6月8日・6月26日・7月1日 ほか4日
9.目で追いながら手を動かす
顔を動かさず、目だけで追いかけます。

ここを見てください
歩きながら周りを見るとき、人は顔ではなく目で情報を集めています。ここが弱ると足元しか見なくなります。めまいが出たら中止してください。
この形を使っている日(16日ぶん)
1月3日・1月6日・2月7日・2月8日・3月8日・3月17日・4月9日・5月10日・6月10日・6月13日・7月14日・7月20日・10月10日・11月25日 ほか2日
10.後出しじゃんけん
わざと負ける、が難しいところです。

ここを見てください
いつもの反応をいったん止めて、別の答えを選ぶ課題です。勝ち癖という強い反応を抑える力を使います。
この形を使っている日(8日ぶん)
1月9日・4月10日・5月5日・5月19日・6月14日・7月3日・9月28日・12月17日

二重課題でいちばん大切なのは、できないことを本人に突きつけないことです。
この運動は、必ず誰かが失敗します。そこで笑いが起きる場なら成功、静まり返る場なら難しすぎます。まちがえた方を指摘しないでください。できない人が目立つ形にした瞬間、その方は次から手を挙げなくなります。
そして、これは評価にもなります。誰の足が止まったかは覚えておいて、記録に残してください。ただし本人には言わないこと。「続けると変わりますよ」で十分です。実際、練習すれば必ず変わります。

いきなり同時にやらせないでください。①片方だけ ②もう片方だけ ③そろえる ④ずらす——この順番で進めると、参加できる方がぐっと増えます。
速さを上げるのは、全員が正しく動けるようになってからで十分です。速くすると場は盛り上がりますが、ついていけない方が黙ります。
▶ その日の体操ごと使うなら
【366日分】座ったままできる高齢者の体操インデックスから、体のどこを使うかで選べます。


